「BL(ボーイズラブ)に興味はあるけど、どの作品から読んだら良いかわからない」。
そんなあなたにおススメなのは、Webコミックサービス「comico」で連載中の
『咲くは江戸にもその素質(以下、咲く江戸)』。

舞台は江戸時代。「その素質」に目覚めた主人公の少女「サク」の日常を
明るく元気に、そして情熱的に描いた当作品。
江戸時代に男性同士の恋愛に萌えるというユニークな設定、独特の世界観、
美しい色彩が読者から高い支持を得ています。

本作の作者である沙嶋カタナさんに作品の魅力や人気作品誕生の舞台裏について伺いました。

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●「その素質」は、誰にでもあるものかもしれない

―――『咲く江戸』が読者から高い評価を得ていますが、
これまでにも連載をもたれていたのですか?

沙嶋さん: 『咲く江戸』が初めての連載です。漫画家になりたくて、
これまでに何度か雑誌のコンテストに投稿したことはあります。
入賞して担当さんがついたこともありましたが、
行き詰まってしまい連載をもつところまではいきませんでした。
ページ漫画以外の新しいことに挑戦しようかと悩んでいたとき、
ちょうどcomicoで作家を募集していることを知り、応募しました。


―――初めての連載とは驚きました。本作は、BLをテーマとしていますが、
これまでもBL作品を描いていらっしゃったのですか?

沙嶋さん: BL作品は、読むのは好きですが、描いたことはそれほどありません。
雑誌に投稿していたころは、少女漫画や人情をテーマに青年誌向けの漫画を描いていました。
今回、comicoで『咲く江戸』を描いたのは、候補となる作品がいくつかあったのですが、
連載向きの作品がこれだったからです。
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▲左から主人公のサクと友達のカメ、フミ。


―――では、『咲く江戸』を描こうと思われたきっかけは何でしたか?

沙嶋さん: 普段、BLにまったく興味がない友達が、男性同士の恋愛を描いた
ドラマなどを見ていたときに「良い反応をするな」と思うことがありました。
また、私の母も、その手の映画を見て「よくわからないけどゾクッとした」と話していたことがあります。
本人達には言えませんでしたが、「それって萌えの感情じゃないの?」と思い、
「こういう感情は、特別なものではなく誰もがもっているものなんだ。
それならば、萌えを感じる人はどの時代にも実はいたのではないか」と気づいたことが、
作品誕生のきっかけとなりました。


―――作品では、男性同士で付き合うことを「衆道のケ」と呼んでいますが、
江戸時代には、実際にあったことなのでしょうか?

沙嶋さん: はい。今のBLとは形は違いますが、
江戸時代にも男性同士の恋愛は文化の1つとしてありました。


―――主人公のサクらは、『南総里見八犬伝』に萌えますが、
なぜこの作品を選んだのですか?

沙嶋さん: 『咲く江戸』を描こうと思ったとき、
まず、少女たちがどんな作品で目覚めるのかを考えたところ、
やはりこの年頃の子たちでしたら美少年からはいるのではないかと思いました。
さらに、江戸時代には、どんな本が読まれていたかを調べると、
『南総里見八犬伝』がとてもファンが多い作品だったということがわかり、
また、様々なタイプの男性が登場しており、「これだ!」と思いました。

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▲『南総里見八犬伝』の信乃と荘助に萌えるサク。


―――江戸時代も読書はさかんだったのですか?

沙嶋さん: 貸本屋が多く、安く借りられたので、庶民でもたくさん本を読んでいたみたいですね。
江戸時代は、庶民文化がさかんで混沌としており、今の多種多様なアニメや漫画が
受け入れられていることにも通じるのではないかと思っています。


―――作品を描くために時代背景などもたくさん調べていらっしゃいますね。

沙嶋さん: はい。もう調べる時間が全然足りなくて……「今回はこのネタを描こう」と決めても、
それが江戸時代に可能だったのかを調べていると、その頃には締め切りが迫ってきていて、
間に合わず別の話に差し替えたこともあります。

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▲沙嶋カタナさん


―――『咲くは江戸にもその素質』というタイトルは、
色気を感じさせながらも品のある素敵なタイトルですね。
どうやって考えたのですか?

沙嶋さん: ありがとうございます。
先ほど、本人は気づいていないけど男性同士の恋愛を描いた作品を見て、
良い反応をする友達がいるという話をしましたが、そういう子を「素質あるな」と思っていました。
だから、タイトルには「素質」という言葉を入れようと決めていました。
「咲く」は主人公の「サク」にかけています。


―――今後の『咲く江戸』は、どうなっていきますか?

沙嶋さん: サクが、周りの人たちを染めていき、どんどん悪化していくと思います(笑)。
また、12話から新キャラが登場しましたが、他にも新キャラを出せないか検討しています。 
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▲手書きのネーム


●半年前までは誰も私の作品を知らなかった

―――連載開始からもうすぐ4ヶ月が経ちますが、
comicoに参加して良かったことはありますか?

沙嶋さん: 週刊連載なので体力的にはきついときもありますが、毎日が充実していてとても楽しいです。
自分が描きたい作品を描かせていただいていることもありますが、
それ以上に読者のみなさんが『咲く江戸』を読んでくださって、感想をいただけることがうれしいんです。
半年前までは、誰も私の作品を知らなかったのに、
今はたくさんの人に読んでいただける環境に感謝しています。


―――これまでは、ページ漫画を描かれていましたが、
WEB漫画ゆえに大変なことはありますか?

沙嶋さん: カラーというところですね。漫画を描き始めたきっかけの1つは、もともと色塗りが苦手で、
それなら白黒を突き詰めようと思ったからなんです。
しかしながら、反対にカラーに助けられていることもたくさんあります。
だから、苦手なんていわずに存分に頑張ろうと思っています。
オーディションのときは、白黒で描いてからその上にベタ塗りで色を塗った程度だったのですが、
それをスマートフォンで見たら全然映えなくて……
スマートフォンには、スマートフォンの見せ方があるということを知り、
すべて塗り直したのも今では良い思い出です。

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▲目を光らせる表現は、カラーだからできたこと。


―――漫画家は、小さい頃から目指していたのですか?

沙嶋さん: 小学生の頃は漫画家になりたかったのですが、
中学生のときにゲームに触れてゲームの世界も良いなと思い、そのままゲーム業界に就職しました。
それでもやはり、漫画家になるという夢も諦めきれず、会社を辞めて漫画を描き、
雑誌のコンテストに作品の投稿を続けました。


―――今、WEB漫画家としてご活躍されていますが、
他にはどんなことをされていますか?

沙嶋さん: 以前働いていたゲーム会社から、デザインの仕事をいただいています。
少し前までは、知人のお店でアルバイトもしていましたが、今は、comicoとデザインの仕事のみです。


―――今後は、どんなことに力を入れていきたいですか?

沙嶋さん: 今はまず、『咲く江戸』がたくさんのみなさんに楽しんでいただける作品となるよう、
努力し続けていきたいです。
また、今後もずっと漫画を描き続けていきたいですが、
もっと画力を上げて、ゆくゆくは挿絵の仕事にもチャレンジしたいと思っています。


―――ありがとうございました。最後に読者のみなさんにメッセージをお願いします。

沙嶋さん: 誰でも、良いことも嫌なこともいろいろありますが、
作品を読んでいるときは、その世界に入り込んで日常を忘れて笑っていただけたらうれしいです。
また、(BLの)腕に覚えのある方は、「ある、ある」と共感していただき、
興味がないという方は、覗き見気分で楽しんでいただけたらと思っています。
今は、まったく興味がないという方も、もしかしたらサクの友達のカメのように、
ある日突然、目覚める日が来るかもしれませんよ。
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▲咲くは江戸にもその素質


【 インタビューを終えて 】
上品で優しい雰囲気をもつ沙嶋さん。『咲く江戸』で初めてBL作品に触れた私に、
BLの魅力を「男性同士という障害があって、それなのに好きを貫くという姿勢に夢を見られる。
女性には未知の世界だから、いろいろな想像が膨らむんですよ」と教えてくださいました。
インタビューが終わり、写真撮影をお願いすると沙嶋さんは、
「江戸時代の漫画なので」と鞄からそっとおかめさんのお面をとりだしました。
これまでの女性らしい印象とは違いすぎて驚きましたが、
関西人らしく「このほうが面白いので」と、お面をつけたまま主人公「サク」の絵を描いてくださいました。
そして、「これから両国の江戸東京博物館に行って、作品の資料になるものを探してきます」
と颯爽と会場をあとにされました。

BL作品は、以前の私のように「興味がない」「苦手」という方も多いかもしれませんが、
『咲く江戸』は、そういう方にも楽しんでいただける作品だと思います。
私は、まだ目覚めてはいませんが、もしかしたらその素質はあるかもしれませんよね。
この作品に出会う前は、そんな日は絶対に来ないと思っていましたが、
今では少し楽しみになっているから不思議です。


●作品紹介
咲くは江戸にもその素質(連載中:毎週水曜日更新)

江戸時代にも、「その素質」を持つ女の子はきっといた筈…。
 
●作家プロフィール
沙嶋カタナ(さじまかたな)

兵庫県生まれ。漫画家。
ゲーム業界でグラフィックデザイナーとして活躍後、comico作家となる。
趣味は旅行。1~2泊で温泉や星を見に行くなど、広い兵庫県内を探索するのが好き。
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